コロナで休業の場合,業務委託と雇用契約でどのように対応方法が変わるか?

弁護士 櫻井俊宏
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学校法人中央大学内の労務問題全般を担当する,中央大学法実務カウンセル(インハウスロイヤー),弁護士の櫻井俊宏です。

仕事を任せた人をコロナ問題で休業させた場合,その任せた人が業務委託契約の場合と雇用契約の場合で対応方法はどのように変わってくるのでしょうか?

このような問題は,例えば,中央大学のように,学校という場所における講義をする場合に発生します。

学校が完全休業となった場合に,講義を担当する者が,学校と雇用契約をしていようと,業務委託契約をしていようと,どちらにしろ講義を行うことができないのですが,その場合に報酬を支払わくてはならないかどうかが変わってくるかの問題です。

1 雇用契約の場合

これは,先日のブログに記載したように,休業の理由によって変わってきますが,原則として,60%の報酬を支払わなくてはならないことになります。

2 業務委託契約の場合

業務委託契約の場合は,「請負」と同じように仕事を完成させることが報酬を請求できる条件となっている場合が多いので,講義を行うことができない以上,報酬を支払わなくても良いという結論になりやすいと思います。

3 雇用契約と業務委託契約の区別

雇用契約か業務委託契約かは,契約書に「雇用契約書」と書いてあるか「業務委託契約書」と書いてあるかで決まると思っている方も多いと思います。

しかし,それも要素の一つではありますが,それ以外の各要素を実質的に考慮して,「使用従属関係」があるといえる場合かどうかから,雇用契約なのか業務委託契約なのかを判断することになります。
裁判例で示されている主だった要素は下記のものです。

・仕事の依頼を断ることができるかどうか
・業務に関する指揮命令の関係があるかどうか
・時間的・場所的に業務を行う場所が拘束されるかどうか
・報酬が時間給かそれとも仕事の内容に対しての報酬であるか
・報酬が給与と呼ばれているかどうか,源泉徴収がされているかどうか

これらを,どれか1つ2つだけで判断するのではなく,総合的に考慮して判断しなくてはならず,しかも,紛争が起こった場合に,最終的に雇用といえるか業務委託と言えるかは裁判所の判断に委ねるしかありません。

このことから,どちらになるか微妙な契約の場合は,仕事を任せる側はできるだけ業務委託契約になるような対応をとっていた方が良いし,仕事を受ける側はできるだけ雇用になるような対応をとっておいた方が良いと言えます。
なぜなら,契約を終了されてしまうことは簡単にはできない等,雇用契約の方が仕事を任される側にとって有利な点が多いからです。

4 最後に

話は戻りますが,コロナ問題で休業する場合,仕事を任せる側も仕事を任される側もこのことを良く認識しておく必要があります。

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そして,いずれの結論になるとしても未曾有の危機の状況であるのですから,両者が良く話し合ってバランスの良い解決を導くことが,今後の良好な取引関係を維持するという観点からしても重要でしょう。

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櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」千代田事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し11年目を迎える。

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