インターネット上では日常語のように使われる「パパ活」。
昔は援助交際と呼ばれるものとほぼ同じだと思われますが、インフレ等で生活が大変な若者が多いのか時代の流れなのか、実際にも増えているように思えます。
「成人同士だから問題ない」「売春とは違う」「手当てだから税金はかからない」…浅薄な思考・断片的な思い込みが先行しがちですが、そうした理解は正しいのでしょうか。
本記事では
・パパ活が違法となる場合とは
-未成年が関係する場合
-対価が伴う場合
-強制を伴う場合
-不法行為
-脱税
・パパ活に潜む社会的リスク
・実際の判例、事件
について解説します。
パパ活・援助交際・売買春

まずは言葉の意味から確認します。
内容と法的性質
パパ活、援助交際、売買春はいずれも似た場面で使われますが、法律上の区分があるわけではなく、時代とともに巧妙に使い分けられてきました。
〇パパ活
2015年頃から使われ始めた比較的新しい俗語です。主に若い女性が年上の男性と食事・デートなどをし、その見返りとして金銭やプレゼントを受け取る行為を指します。
本来は「食事・会話・同伴」などを建前としますが、実態として性行為を伴うケースも多く、境界はかなり曖昧です。
〇援助交際
1990年代以降に広く使われるようになった俗語で、金銭その他の利益と引き換えに、交際や性的関係を持つ行為を指します。「交際」という言葉が含まれていますが、実態としては対価性のある関係を意味する場合が大半です。
〇売買春(売春)
金銭等の対価と引き換えに不特定の相手と性行為を行うことを指し、「売春」は法律用語です。三者のうち最も実態を端的に表しています。
日本では昭和31年に売春防止法が公布されて以降、売春は禁止されていますが、処罰の対象となるのは勧誘・斡旋・場所提供などの周辺行為です。
なぜ、いま「パパ活」?
並べてみると三者の境界は曖昧であることがわかります。
では、今なぜ「買春」「援助交際」ではなく、「パパ活」なのでしょうか。
〇社会的・心理的カモフラージュ
まずは印象操作です。買春と呼ばず「パパ活」と言い換えることで、行為に伴う罪悪感や違法性の意識が薄れるのでしょう。
そして「パパ活」という軽快な響きは一つの社会現象を生み出し、専用アプリやSNSを通じた一大市場が形成されました。その結果、出会いや条件交渉が効率化され、参加への心理的ハードルがさらに下がるという自己増幅的な循環が生まれています。
〇スマホ時代にマッチ
次に時代対応です。
スマートフォンさえあれば、出会いから条件の確認、連絡のやり取りまでがすべて個人の端末内で完結し、専用アプリやSNSを使えば匿名のまま相手を探すことができます。
対面での交渉や第三者の仲介を必要としない気軽さが、スマホ時代と強く噛み合っていると言うわけですね。
パパ活が違法となる場合

時代や状況で呼び方が変わっても、裁判所や捜査機関が重視するのは実態です。逆に言えば、言葉によって法的評価が左右されることはありません。
では、実際に違法となる場合を見ていきましょう。
未成年
未成年は広く保護の対象とされます。
〇児童買春罪(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第4条)
金銭等を対価として児童(18才未満)と性的行為を行った場合、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
〇青少年健全育成条例違反(各都道府県の条例による)
18歳未満の者とみだらな性交又は性交類似行為を行った場合、各都道府県の条例に違反し、罰則が科されることがあります。東京都の場合、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(18条の6、24条の3)。
〇未成年者誘拐罪(刑法第224条)
わいせつ目的や長時間拘束するつもりがなかったとしても、相手が未成年だと知って連れ回す行為は未成年者略取・誘拐罪が成立する可能性があります。刑罰は3月以上7年以下の懲役です。
対価が伴う性行為
成人同士であっても金銭の授受を前提に性的行為を行うことは、売春防止法で禁じられています。ただし、処罰の対象となるのは性行為そのものではなく、売春のあっせん・管理・場所提供などの周辺行為であり、売る側については公衆の面前で勧誘や客待ちを行った場合には、6か月以下の懲役又は1万円以下の罰金が科されます(同法5条)。
もっとも、政府は売春防止法の見直しに向けた検討会の設置を表明しており、今後は買う側への罰則導入も含めた法改正が議論される見通しです。
「売る側」しか罰則規定ない売春防止法、見直し巡り有識者検討会設置へ…「買う側」の罰則を議論 : 読売新聞
強制を伴う性行為
同意のないわいせつ行為や性行為を行った場合は不同意わいせつ罪・性交等罪(刑法第176、177条)が成立します。法定刑は前者が5年以上20年以下拘禁刑、後者が6月以上10年以下の拘禁刑です。
不法行為
民事上の責任が発生することもあります。
一方又は双方が既婚者でありながらパパ活を通じて相手と性的関係を持った場合、被害配偶者すなわちパパの妻から不貞行為を理由に慰謝料請求をされるおそれがあります(民法709条、710条)。その金額は100万円を超えることも少なくありません。
脱税
行為の違法性が問われなくても、パパ活で得た収入を無申告のままにしていると、追徴課税や加算税の対象となるおそれがあります。
〇所得税
パパ活で受け取る金銭や物品は名称が「お手当」「支援」「プレゼント」であっても、実態として継続的・対価性がある場合は、原則として所得税の課税対象となります。
| ・定期的な金銭授受 ・デートや性的関係への対価 ・金額や条件の事前取り決め |
こういった事情があれば、税務上は役務提供の対価と評価され「雑所得」として申告が必要になります。
年間の所得が一定額(副業であれば20万円、本業なら48万円)を超えれば、確定申告しなければなりません。
〇贈与税
贈与税も問題になります。
・明確な見返りや条件がない
・恋人関係などの延長としての高額な贈与
このような場合、年間110万円を超えれば贈与税の申告が必要になります。
パパ活に潜む社会的リスク

ここまで見た通り、パパ活には法律に抵触する場面が少なからずあります。
ただし、実際には警察や裁判よりも、日常生活の中で突然現れる現実的なリスクに直面し困ることが多いでしょう。
ここからは、「違法かどうか以前に実生活の中で困る問題」についてケース別で取り上げてみましょう。
会社にバレる
パパ活で得た収入を申告していなければ、後に税務署から指摘を受け、追徴課税や加算税が課される可能性があります。
とくにSNS上での私生活の発信は、収入と生活水準の不自然な差を示す資料として税務署の調査のきっかけとなることが実務上知られています。また、パパ側の不適正な経費処理によって女性側にたどり着くこともあります。
逆に、女性が正確に申告をしていたとしても、住民税額が本業の給与に見合わない形で増加すれば、その差額は住民税の特別徴収を通じて勤務先に通知されます。
その結果、会社が副収入の存在に気づくことになります。
副業の可否や届出義務が就業規則で定められている会社であれば、内容によっては懲戒処分や人事評価への影響を免れません。
例え内規上の問題がなくても、パパ活という性質上、職場に居づらさを感じるケースは少なくないでしょう。
書面によらない契約
もう一つの大きなリスクは、関係の大半が書面によらず、口約束やSNS上の曖昧なやり取りだけで成立しているという点です。
金額や頻度、行為の内容といった重要な条件が明確に整理されないまま関係が始まるため、後になって認識の食い違いが生じやすく、条件変更や約束不履行が頻発します。とくに当事者間の力関係が崩れたときに深刻な問題を引き起こします。「約束した」「同意していたはずだ」という一方的な主張とともに、詐欺や不同意性交などの重大な法的問題に発展しかねません。
さらにトラブルが生じた場合、書面による合意が存在しないため自らを守る客観的な証拠が乏しいのも弱点です。SNSのメッセージは削除や解釈の余地が大きく、必ずしも有利な証拠として機能するとは限らないことに留意すべきです。
実例
実際の事件を紹介します。
〇不貞行為合戦(東京地判 令和6年9月10日)
婚姻関係20年以上になる夫婦(子ども3人)に関する判例です。
パパ活に興じる夫への腹いせに、妻が出会い系アプリで知り合った男と不貞行為に及びます。妻の不倫に気付いた夫は関係をやめさせようとしますが、相手男は連絡手段を変えるなどして1年間に渡り関係を継続した結果、夫は精神的苦痛を受けたとして提訴、夫からの90万円の慰謝料支払請求が認められました。
不倫関係期間が1年と比較的短く、夫婦の婚姻関係は継続していること、事の発端は他ならぬ夫であることを理由に、90万円という額に抑えられています。
〇盗撮被害
こちらは事件報道です。
東京都内のホテルで女性との性交を盗撮し、その動画を販売サイトに投稿したとして、男とその妻、元内縁の妻の3人が性的姿態撮影等処罰法違反(撮影など)の疑いで逮捕されました。
報道によれば、男らは新宿区のホテルで行為を盗撮し、動画を販売サイトに投稿した疑いが持たれています。ホテルの天井には火災報知機を装ったカメラが設置されており、回収の様子も確認されているとのことです。
男らは「パパ活」をする女性ら約100人を盗撮し、動画販売で5000万円以上を得ていた可能性があるとみて、実態解明が進められています。
「パパ活」女性とのわいせつ行為を盗撮、販売サイトに投稿疑い…夫婦と元内縁の妻を再逮捕 : 読売新聞
言葉が軽くても、法的リスクは軽くならない

「パパ活」という言葉は軽やかで、どこか日常的です。しかし、態様によっては売春防止法や刑法、不法行為責任、税法等、複数の法的問題が発生します。
また「誰にも知られずにできる」というイメージがありますが、実際には税金という極めて現実的な経路から可視化されやすい行為です。さらに、匿名関係ゆえの盗撮や拡散被害、書面によらない契約関係の脆弱さや立証困難によって、いざという場合自分を守れないというリスクも軽く見てはいけません。
また、「パパ」の側から考えても、良く素性がわかっていない人とのパパ活行為は、秘密をばらされたくなければと女性側から恐喝される恐れもありますし、最近流行している不同意性交罪の被害を訴えられる恐れもあります。
パパ活は法的にも社会的にも極めて不安定な行為であることを直視することが何より重要です。



コメント