逃走罪とは  ~樋田氏の富田林署からの逃走~ 【弁護士が解説】

最新時事問題の法的考察

また台風が迫っており,戦々恐々としている菊川です。
樋田淳也容疑者が山口県で逮捕されたというのが,台風と同じく本日のホットニュースですね。樋田氏と行動をともにしていた謎の人物も気になります。

さて,加重逃走罪ということで逮捕されている被疑者・樋田氏ですが,逃走罪について説明いたします。

1 逃走罪について

逃走罪は,刑法97条以下に規定のある犯罪です。

多くの方が勘違いされているところですが,逃走罪は,「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者」が逃走したときにのみ成立する犯罪です。
また,加重逃走罪は,上記の者に加え,「勾引状の執行を受けた者(逮捕状により逮捕された者を含む)」が対象となり,逃走の際に拘束器具等の損壊や暴行・脅迫を行った場合に成立します。
なお,「既決」とは,裁判によって有罪が確定した者をいい,「未決」とは起訴されているもののまだ裁判が確定していない者をいいます。

つまり,逮捕されただけであれば,それが逮捕状によるものであったとしても,ただ逃走するだけでは犯罪は成立しません。
逃走の際に暴行や器物損壊があれば加重逃走罪が成立します。
なんだか変な感じですね。

今回の樋田氏は,既に起訴されていたとのことですから,「裁判の執行により拘禁された未決の者」にあたります。そして彼が,接見室のアクリル板を破壊等して留置場から逃走していますから,加重逃走罪の構成要件を満たしますね(厳密にはアクリル板を破壊したのが樋田氏であると立証する必要がありますが)。

今回,逃走罪が話題になったことで,職務質問の場から離れたり,警察を見たら走り出すような行為も罪になるのではないかと疑問に思う方がいるかも知れませんが,それらは全く適法な行為ですので,心配無用です。ただ,そうした行動を採ることによって警察が疑いを深める可能性は否定できませんが・・。

2 樋田氏の件 判決について

さて,この件について,2020年7月3日,第1審の大阪地方裁判所堺支部で判決が出ました。
懲役17年だそうです。

確かに,逃走前の強盗致傷,強制性交罪等の凶悪犯罪も含んでのことだから,これぐらいは当然とも思えます。

しかし,今回検察の求刑は18年であり,✕0.8ぐらいが一般的な判決の相場感と言われています。
このことからすると,17年はちょっと重いと言えますね。
裁判官は,社会を騒がせた影響性等も考慮したのかもしれません。

逃げる程責任をなるべく逃れたい樋田氏であるから,控訴の可能性も高いでしょう。
注目です。

(2020.7.3更新)

 

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」千代田事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し11年目を迎える。

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