2023年99回箱根駅伝、中央大学公式オンライン応援企画のメインコメンテイターを務めた櫻井俊宏です。2001年中央大学応援団副団長であり、現在、中央大学応援団の助監督もしております。
あらためて、中央大学の準優勝、おめでとうございます!!
箱根駅伝としては、1996年の73回大会優勝以来の25年以上ぶりの好成績ということになります。
なぜ、このような成績を納めることができたのか。今大会、私は、「目に見えない力」というものを非常に感じたということを織り交ぜてお話していきたいと思います。
・99回箱根駅伝中央大学準優勝の軌跡
・駒澤大学優勝 中央大学準優勝から優勝へ【目に見えない力】
・中央大学の箱根駅伝100回記念大会の展望
等について解説していきます。
1 99回箱根駅伝中央大学準優勝の軌跡
まず99回箱根駅伝、各区間の中央大学選手の活躍を振り返ります。
1区は1年生のスーパールーキー2人の1人、溜池一太君。
その背筋の伸びた堂々たる走りを集団の真ん中で展開する姿は、良い予感しかせず、その後の中大に待ち受けている好結果を象徴しているように思えました。
そして区間4位で、2区、大学界のエースとも言える3年生吉居大和君へタスキリレー。
この2区がやはり今大会の中央大学の最大のハイライトでしょう。
中央大学エース、3年生吉居大和君。
初めての花の2区を任された吉居大和君、最初で飛び出し先頭に躍り出ました。
しかし、その後、駒澤の4年生田澤廉君、10000m27:23、外国人選手よりも速いゆえ、ツイッター等で世界レベルの選手という畏敬の念もこめて「レン・タザワ」とも呼ばれるこの男に抜かれてしまいます。
その後、下を向き、うつむき加減で走っているシーンもあるように見受けました。心が折れかかったのかもしれません。
しかし、その後、吉居大和君と小さい頃から愛知のクラブで同じだった幼なじみでもあり、これまで田澤廉君と各駅伝でデッドヒートを繰り広げてきた青山学院の4年生エース近藤幸太郎君が、吉居大和君を抜きました。この際、「ついて来い」と言わんばかりの近藤君のジェスチャーがありました。吉居大和君はこれについていきました。
徐々に吉居大和君はペースを掴み、2区の中継所前で日本を代表する3校のスーパーエースが三つ巴になりました。
そして、最後の力を振り絞り、田澤君、近藤君の4年生スーパーエースを振り切ったのは、3年生吉居大和。
そのまま、2区は吉居大和君の勝利で終わりました!
吉居大和君、取材の受け答え等も極めて謙虚な好青年でありながら、巨大な闘志を胸に秘めていて駅伝に対する自負心は誰にも負けない(You Tubeの選手レーティングで自らの駅伝力を「オール5」と評していました。)陸上競技者の模範のような選手。
昨年の箱根駅伝1区、最初から飛び出し圧倒的な区間新。出雲駅伝1区区間新。全日本駅伝では、帯状疱疹で体調不良もありながら6区区間賞。
そして、今大会では、3区や1区を予想されながら、大方の予想を覆して、花の2区で各校エースと対峙し、駒澤田澤君、青山学院近藤君を力で振り切り、区間賞。
全てのお膳立てが整ったからこその、学生陸上界最強3校の最強3者の競り合い、そして我らが吉居大和君が勝つという最高のシーン!
思えば、「見えない駅伝の神」は、昨年から全てこの若者に微笑んでいるような気さえします。
そして、2区3年生吉居大和君から、同じく3年生で、吉居大和君と並ぶダブルエースと呼ばれる3区中野翔太君へ。
中野翔太君は、昨年、10000m28:00という中央大学最高、昨年の全大学記録でも2位というとんでもない記録を打ち立てました。
それでも中野翔太君は、選手レーティング等で「自分は駅伝で貢献していないので」と自分はエースとはいえないという態度に終始していました。
しかし、今大会、中野翔太君は、3区で他選手を寄せ付けない走りで、区間賞をとりました。
このときこそ、中野翔太君が自他共に認める「エース」となった瞬間なのでしょう。
選手レーティングの動画、とても興味深かったです。特に千守君と中澤君のやりとりが漫才以上で最高!
4区、1年生吉居駿恭君へ。
溜池君と並ぶスーパールーキーも、兄らが繋いだたすきを少しでも前で繋ぐという魂の走りで、区間5位。5区2年生阿部陽樹君につなぎました。
阿部君は、昨年も1年生にして5区区間6位、10000m28:30で、どの大会でも安定している実力者。
そして、中央大学は、5区区間賞の藤原監督、区間3位の山本コーチ、区間3位の大石プレイングコーチをスタッフに擁し、5区のノウハウについて最も蓄積がある学校といえなくもありません。
これは「阿部君が区間賞を取る」条件が整ったといえると思いました。
結果、阿部君は過去の5区区間記録に迫る好走、しかし、前をいく2人が区間新を出したのに次ぐ、区間3位でした。
これも見えない力が、まだ2年生の阿部君を4代目山の神にするのであれば、100回記念大会がふさわしいとしたように思えました。
そして、往路準優勝!
この往路の5人は、まだ来年も残ります。
復路。中大は4人の4年生を並べてきました。
4年生の学生最後の絞り出す走りを期待してのことでしょう。
6区主将4年生若林陽大君。普段は物静かだが、陸上に対する闘志はものすごいとのこと。
2年生6区区間5位、3年生6区区間5位、このような好走をしても、悔しそうな顔をいつもします。
最後の箱根駅伝、最後の6区、若林君は素晴らしい走りで区間2位。
しかし、駒澤大学を捉えたかったのでしょう。駒澤大学1年生伊藤君はさらなる強い走りを見せ、区間賞。
差は縮まらないことが残念そうでした。
7区、今期復調して絶好調の4年生千守倫央君、区間4位。
8区、走る哲学者と呼ばれるクレバーな4年生中澤雄大君、区間7位。
9区、昨年同じく9区で爆走区間3位を見せた3年生湯浅仁君、区間6位。
いずれも、意地と感謝のこもった、3位以下の後続を引き離す強い走りを見せました。
そして、10区助川拓海君も区間3位という締めくくりにふさわしい爆走を見せ、駒澤に1分42秒差の復路2位、総合2位。3位の青山学院を5分32秒も引き離す圧巻の成績でした。
入学してから2位以上の成績を見ることがなかった、今後もうないのではないかと思う時代もあった私も、目頭が熱くなりました。
2 駒澤大学優勝 中央大学準優勝から100回大会優勝へ【目に見えない力】
今回の箱根駅伝を振り返ると、往路は、中央大学に目に見えない「流れ」が完全にきていました。
全員コンディションが良好な上に、吉居大和君が各校エースを堂々と渡り合って破り、勢いをつけ、往路優勝の目標に準ずる2位となったわけです。
そして、その流れは復路がはじまる直前まで止まりませんでした。
駒澤や青山学院、國學院に体調不良者が続出。対して、中央は、前回区間上位経験者が3人。
「これは優勝もある。」と思わされました。
しかし、駒澤はその流れを凌駕しました。
中央大学長距離ブロック出身で、国立で「ぶちえらい」等居酒屋3店舗を経営する私の同期の友人藤村君がツイッターでツイートしていた通り、実戦的には、駒澤の6区1年生伊藤君がどのような選手かあまりデータがなく、前回大会でも活躍の中央大学若林君が抜くのではと思われたのに、むしろ伊藤君が区間賞を取ったのが大きかったと思います。
流れは変えられました。
ただ、より強い見えない要素があったと思います。
中央大学は総合3位以内を目指していました。
それに対し、駒澤は、絶対に総合優勝、三冠をとるという目標を早くからかかげて突き進んでいたことが、少しずつの見えない差となって出てきたのではないでしょうか。大八木監督が終了後退任を発表したことからも、よほど今大会にかける意気込みがあったのでしょう。
前回大会では9区の区間順位が湯浅君より下だった山野君が、湯浅君より良いタイムだったのも、今年の駒澤の執念を見たような気がします。
敵ながらあっぱれです。
とは言うものの、個人的には負け惜しみのようなものでもなんでもなく、一気に優勝までとっては、喜びの回数が少なくもったいない、次回を楽しみにしたい、と考えております。
なぜなら、次回は記念すべき100回大会だからです。
吉居大和君という陸上界の至宝を中心に、4年生である彼を他の選手が越えようとし、強くなり、まとまってきた末にある次回大会こそ、満を持して優勝を狙う流れなのだと思います!
そのためには、選手の日々の研鑽、チームの研鑽等が差をつけることになりますが、更に必要なものがあります。そう、目に見えないみんなの「応援」です。
それはもちろん陸上部スタッフや出場しない選手の応援をはじめとして、現地に応援に行く人、実際に会ったことがある人、私達のようにテレビやオンラインで応援する人、全てです。
その見えない者、見える者、1人1人の応援があるからこそ、中央大学の応援全体が盛り上がっていき、選手の目に見える応援も増え、その力が選手を後押しするのだと、今大会の盛り上がりを見て、またオンラインで見ている先から伝わってくる皆様の熱力から、ひしひしと感じました。
青山学院大学の原監督も、インターネットの記事で、沿道応援の規制について言及していますが、その大事さをわかっているからこそなのでしょう。
青学大原監督「演出部分で劣化している 僕は非常に不満」
皆様、100回記念大会優勝に向けて、共に中央大学を全力で応援していきましょう!
3 中央大学の箱根駅伝第100回記念大会の展望
中央大学は、今回走った4年生が4人卒業します。
青山学院大学は、今回走った4年生が7人卒業します。これは、2023年を走った経験を積んだ選手が3人しかいないということを示すことになり、大変です。
これに対して、駒澤大学は、今回は走った4年生は3人です。特に3年生は、今回エントリーされた他にも唐沢君、白鳥君等の超高速ランナーがいて、強力だと思いました。
ためしに、私が良く参考にしている下記のページで、上位各大学4年生が抜けた後の10000m上位10人の平均を大雑把に計算してみました。
箱根駅伝-今年の戦力と予想
中央大学は約28:32でした。駒澤大学は約28:24、青山学院大学約28:35、國學院大学約28:59です。
これらのことを考えると、優勝した駒澤大学よりも多く、次の選手が出てこなくてはなりません。
まず、現状の選手だと、今回エントリーした選手、
6区の候補と言われる大澤健人君(10000m29:14)、
長い距離に強い2年生山平怜生君(10000m28:52)、
全日本でぎりぎりまで出る予定だった東海林宏一君(10000m29:15)、
最近ぐんぐん伸びている1年生白川陽大君(10000m29:04)、佐藤宏亮君(10000m29:11)
らは、その候補といえるでしょう。
最近、体調が悪いのか、あまり記録会とかでは出てきない園木大斗君や居田優太君らのスピードランナーも、昨年の千守君のように復活してくるかもしれません。
昨年、チーム全体で120回のPBを目指すことをチームの目標とし、123回を達成したことで、他の選手もどんどん持ちタイムが良くなっています。
あとは、もちろん新1年生にも注目です。
できる範囲で調べた情報です。
柴田大地君(洛南) 5000m 13:57 2022全国高校駅伝1区区間11位
鈴木耕太郎君(國學院久我山)5000m 13:57 10000m29:11
本間颯君(埼玉栄) 5000m 13:59 2022全国高校駅伝4区区間5位
藤田大智君(西脇工) 5000m 14:04 2022全国高校駅伝2区区間9位
山崎草太君(西京) 5000m 14:05 2022全国高校駅伝1区区間8位
佐藤蓮君(仙台育英) 5000m 14:10 2022全国高校駅伝7区区間3位
小田切幹太君(学法石川) 5000m 14:13
伊藤春輝君(橘) 5000m 14:16 2022全国高校駅伝3区区間9位(日本人4位)
後藤琉太朗君(東海大札幌) 5000m 14:22
助川颯都君(水城) 5000m 14:26 10区助川拓海君の弟
今年の吉居君や溜池君のような際立った大物の存在はないとしても、柴田君、鈴木君、本間君と、5000m13分代3人は同じです。
また、伊藤君や佐藤君は、駅伝が強そうな感じがあります。
今年の藤原監督の育成に注目したいと思います!
4 まとめ
みなさん、ブログを読んでいただきありがとうございました。
また、オンラインを視聴していただいた皆様、ありがとうございました。
参加された関口康平さん、スポーツ振興室、井上大輝さん、三須健之介さん、大学関係者の皆様、お世話になりました。
そして、オンライン応援企画では、特に区間の紹介で、碓井哲雄先輩の「箱根駅伝 強豪校の勝ち方」を良く引用させていただきました。
碓井さんとは、一緒にお酒を呑ませてもらったり、碓井さんが亡くなられた後に京葉白門会の講演で箱根駅伝についての講演者をさせていただいたり、とてもご縁を感じます。
天国の碓井さん、ありがとうございます!
中央大学は6位→2位と来ています。来年はきっと優勝ですよ!!
PS まだチームエントリーも出ていない11月19日アップのYouTubeの予想で、7区間のエントリーを当てたのは嬉しかったです。
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